「土」とは何かという問いに、正確に答えることは困難です。「地球の表面を被っている最上層部にある軟弱で固まっていない堆積物の集合体」と言っても、あまりピンとはこないでしょう。一般的な「土」のイメージはいろいろと異なっていますが、地質学などでは、粒子の大きさによって、粘土・シルト(微砂)・砂または礫などに区分し、それらを総称して「土」または「土壌」と呼んでいます。「土」は、いろいろな動植物の遺骸の分解物を含み、植物を生育させ、多くの微生物や動物の棲み家を提供するという特長を持っています。
「土」には多くの生物が棲んでいます。大型のものでは、モグラやミミズなどが穴を掘って生活しています。また「土」の表面には昆虫やダニ、原生動物なども活動しています。「土」の中にはカビやキノコなどの菌類、細菌類といった土壌微生物も暮らしています。良く肥えた農地なら、1gの「土」の中に数十億の微生物が生息していると言われており、生物の遺骸や排泄物をはじめ有害な有機化合物などを分解して、二酸化炭素や水などに変換しています。
また植物の根と共生して養分を植物に与える菌根菌や根粒菌などがいる反面、動物や植物の生育に有害な病原微生物も多く存在しています。
これらの微生物は絶妙のバランスを保ち、有機物を無機物に分解しています。動物は有機物を食べて消化器官で無機質に分解して体の中に吸収しますが、植物は有機物を無機質に分解できる消化器官を持っていません。言わば植物の消化器官にあたるのが「土」なのです。
「土」の環境が壊れると微生物のバランスがくずれ、有機物をうまく無機質に分解できなくなる。それは、ちょうど人間が消化不良をおこしているのと同じことなのです。現代文明の「土」の多くは微生物のバランスをくずし「土」本来の持っている能力が弱っている、いや、瀕死の状態といっても過言ではないでしょう。

